〜 タバスコとシナモン 〜

カメラと写真・朽木鴻次郎

Rollei35TEへの思い出

例えば、誰かがあなたを喜ばせようとして、あるいは祝福しようとして、何かをしてくれた、プレゼントをくれたとしよう。それを「祝福」とも「プレゼント」とも気づこうともせず、「べつに、いらないよ。それ、そんなに好きじゃないし」と言ってしまっていたら? 

 

とても残酷なことだ。肉親に対してはなおさら。

 

 

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今から35年以上も昔の20代のころ、写真を撮るときは、父親からローライ35を借りて使っていました。あるとき、「そんなに使うなら、それあげるよ」って言われましたが、「いいよ、いらない」って断ってしまいました。

 

目測式のローライ35(Rollei35)で、あんまり写真がうまく撮れなかったのです。

 

手ぶれの可能性もあるんだけど、シャッタースピードは早めに設定してた記憶がある。

 

「コダックのASA400のフィルムを使って、シャッタースピードは早めでセットするんだ」

 

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そう教わったんです。それでいつも1/500を使ってたと思う。やりすぎですね。ピントもボケちゃうわけだ。

下は、ローライ35で昔撮った写真です。大きく引き伸ばして以前アパートの壁に貼ってたもの。アメリカで撮った1985年8月の写真。30年以上前ですね。

そこそこよく撮れてるじゃんヽ(´▽`)/

みんなどうしてるかなぁ?

 

 

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2016年、段ボールをゴソゴソ整理してたら、出てきたのが、取扱説明書。

 

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あ、あのときのローライって「TE」だったんだ! テッサー、テッサーって親父が言っていた記憶がある。読んでみると1979年の取説だ。...「TE」が発売されたのは、シリーズの中でも随分後のことなんだな。一浪して大学に入ったのが、1980年だ。あれ? もしかしたら... 親父がぼくの大学入学の記念に買ってくれたんじゃないかな、色々考えてみると、どうもそんな気がします。

 

ぼくの父親は、1998年に72歳で死んでしまったので、もう確かめようもありませんが。

 

「そんなに使うのなら、コージロー、これあげるよ?」

「いらないよ、このカメラ、うまく撮れないんだもの」

 

父親は、子供達にお祝いの何かをあげる、プレゼントをする、そういったことを極度にしない人でした。シャイだったんだね。粋だったのかもしれない。

 

++++

 

最後にこれを使ったのが、1986年のこと。そのあと、色々あったんですが、なんとか手元に戻ってきました。カメラのことをよくわかっている人の手にあったのです。どうやら一度整備にも出しているようです。ローライ35TEにはLEDライトの露出計が付いている。使った覚えないなぁ。電池入れたことがないもの。

 

作動もスムースです。整備がきちんとされていて、あまり使われなかったのかもしれないな。この個体ではちゃんと露出計が使えます。ただし、現行の電池では電圧が違うので、設定するときに単体露出計を使って補正が必要です。

手元に戻ってきて、触って、ほんと懐かしくなりました。国立(くにたち)の桜撮ったり、井の頭公園でボート乗ってて撮ったり、今は建て替えられた丸の内の富士ビルの階段の踊り場で、同僚の彼女のYさんの写真撮ったり、馬場先濠のところで美人役員秘書のOさん撮ったり、アメリカ持ってって、学校の仲間撮ったり、スミソニアン博物館でゼロ戦とかグラマンの写真をいっぱい撮ったなぁ。

あの写真は一体どこに行ってしもうたんでしょうか。多分捨てられていると思う。

ある種のきっかけ、例えば料理の匂いとか、体育館に響くバスケットボールの音とか、今回はカメラの重さとか操作とかですが、そういったきっかけで、いろんな記憶が鮮明に浮かび上がってくる。

 

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オリジナルの速写ケースはレアだし、オークションでも高い。eBayで探してみたら、レプリカがお安い値段であったので買ってみました。首から下げてると「白木の箱」を抱いてるような雰囲気になります。ソフトケースもいいけど、ハードケースもまた良しです。 

 

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手元に戻ってきたのが2016年の夏のこと、早速コダックのフィルムをつめて写真を撮りにいきました。

 

  

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ポートラ160を使いました。天気が良かったんです。

 

 

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じゃかじゃん、サイバーパンクなパチンコ屋さんが青空に映えること ヽ(´▽`)/ 

 

 

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 ちなみに、ローライ35のお約束として、しまうときは、巻き上げてレンズを沈胴させます。バネがへたらないのか?という質問に対して、日本の代理店さんは「そんなやわなバネは使ってません」と胸を張ったという逸話もあるくらいです。

 

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一般に機械式のフィルムカメラは、巻き上げておくとシャッターがチャージされる。つまりカメラの中のどこかのバネが引っ張られるか押し込まれるかして緊張状態にあることになるので、長時間そのままでカメラを放置するのは原則的にはバネや機械の負担になってしまい、よろしくないのです。

だから、ぼくらが若いころは、カメラは「巻き上げないで保管する」のがいわばタシナミとしての常識だったのですな。

 

でもローライ35は巻き上げておく。

 

巻き上げてローライ35のレンズを沈胴させるとカメラ本体・機構に負荷負担がかかるかどうかについて、日本語の取説には上の写真のような記載があるのですが、英語の取説や読めないけどドイツ語の取説をみてみてると、日本語のと同じような記述はないんですね。日本の取説だけに記載されている可能性がある。

 

なんか気になり修理の専門家に質問してみました。頂いた回答を要約すると以下の通りです。


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負荷に関係するバネは二箇所ある。絞り機構に関連するものとシャッター関連である。絞り関連のバネはレンズセット(伸展)で負荷がかかり沈胴時に解放される。シャッター関連は巻き上げで負荷がかかりシャッターリリースで解放 される。つまり関連する二つのバネを双方とも同時に解放することはできない。保管するとき沈胴がいいのかレンズをセットした状態がいいのかは難しいところであるが、「解放」と言っても100がゼロになるわけではなく、せいぜい50になる程度であり、かつ、多数のローライ35を修理した経験から言うと関連するバネが金属疲労でへたっているものには遭遇したことがない。どちらでもいいと思えるが、少なくともレンズをセット(伸展)して保管するなら巻き上げないほうがいいのではなかろうか。

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これでスッキリしましたヽ(´▽`)/ 

 

©️ 朽木鴻次郎
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