〜 タバスコとシナモン 〜

カメラと写真・朽木鴻次郎

陰影が欲しいのか、階調の変化を楽しみたいのか

先日、録画しておいた古い東宝のサラリーマン映画を観たんです。植木等クレージーキャッツの「無責任シリーズ」の初期の作品。
白黒映画です。
 
 
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             京都駅ビル
 
クレージーの映画、白黒なんだけど、スコンと明るいの。光が当たっているところも影になっているところも良く写っている。フィルムのラチチュードが広いのかな。
 
 

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              工場・作業場の外壁
 
2006年のNHKのBS番組「プレミアムカフェ  クリント・イーストウッド  走り続ける76歳」が先日再放送されたので、それも観ました。
監督としてイーストウッドは「黒をもっと黒く」と撮影監督に求め続けたという。人物の表情を際立たせてその心理を描写するために「ミリオンダラー・ベイビー」では「もっと黒く(more black)」を要求したという。
 
ああなるほど。
 
 

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             廃屋とその中の廃車
 
何年か前に、市川崑の「おとうと」(1960年)を、これもBS放送だけれども、観たときはびっくりした。暗くて狭い日本家屋の奥の暗い部屋からふすまを半分開けて、明るい居間にいる家族をなじる田中絹代アップ。奥の部屋の暗がりを背景とした田中絹代のアップのその凄み。
撮影の宮川一夫が世界で最初に「銀残し」の手法を使ったことで有名な映画だそうですが、不覚にもぼくは知りませんでした。
 
田中絹代の鬼気迫る表情や、川向こうの多分洲崎遊郭の赤い灯青い灯が大川に浮かぶシーン。すごかった。
 
カラー映画なんですけど、黒かった。
銀残し(bleach bypass, silver retention) の映画は当然ながら何本も見ている。それこそイーストウッドの「硫黄島」もそうだけど、映像自体にはあまり注目しなかったな。やっぱり宮川一夫はすごいな。いや、映像だけの映画表現に注目させないイーストウッドもすごいのだな。
 
それはともかく。
 
どんな表情のどんな写真で何をどう表現するのかしたいのか。その技術が自分にあるのかどうか、フィルムや機材はそれに合致するものなのかどうか。
 
白黒で写真を撮っていて、自分としてどうもしっくりこないのにはそういった課題がありそうだなって思ってます。
 
 
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