Vito B。フォクトレンダーのコンパクトカメラのレンズ基部のアップです。EV11で設定されたところ。
この写真は、コダックのレチナIIIC の EV目盛りです。EV13を指しています。
どちらもLV方式のカメラと呼ばれ、シャッタースピードと絞りがロックされて連動固定される方式のカメラです。
LV(ライト・バリュー)あるいはEV(エクスポージャー・バリュー)というのは、要するに光の量を示す数値です。LV は絶対値で、EVは相対値なんですが、四捨五入して言えば、EVもLVも同じことです。
なんでわざわざいろんな言葉を使うかな!
露出計の数値。上の写真をご覧ください。EV11に合わせてあります(注:ISO・ASA値は100で設定)。
ISO感度100(昔の単位のASA100)に合わせて、EVが11のとき、シャッタースピードと絞りの組み合わせがダイアルで示されています。三種類の露出計でそれぞれ表示場所が違うけど。
Vito B でもレチナIIICでも、あるEVでシャッタースピードと絞りのダイアルを合わせると、同じ組み合わせで二つのダイヤルがロックされます。その組み合わせのうちでどれを選ぶかはご自由にっていうわけですな。
二つのダイヤルはロックされて連動する。
これがロックのツメです。両方を押すとロック解除されるので、絞りダイヤルとシャッターダイヤルを独立で設定できる。
この方式は、電気式オートマチックの露出決定機構(AE)が確立されるまでの過渡期に出現した方式らしいっす。
こういった古いカメラのLV(ライトヴァリュー)方式なのは、面倒臭いとか、使いずらいとか、残念だ、という声を聞く。実はぼくもそう思っていました。
LV方式のカメラを使うとき、シャッタースピードをまず1/60に決めておく、とか、絞りを5.6で行こうとか、そちらの方を先に決めてしまっているとLV方式カメラは使いにくい。
雲が出てきて陰ってきたとか、お日様が出てきたとか、光の状況が変わったときに絞りやシャッタースピードのどちらか一方だけを変更しようとすると、絞りとシャッタースピードがロックされて連動する機構はちょっとめんどくさいとも感じる。
なんで、連動ロックされているんだ! 怒! となるんですね。
ところが...
それは、シャッタースピード優先方式であったり、絞り優先方式の考え方だからです。そうではなくて、LV(EV)からのアプローチをすると...
あれ、便利! ヽ(´▽`)/... カナァ?
これはレチナIIICの露出計。LV(EV)数値しか出ないのですね。
露出計なり、体感なりで、LV(EV)数値を把握したら、まずカメラのLV(EV)数値をそれに合わせちゃう。そのときシャッタースピード数値、絞数値は忘れる、気にしない。
まずは、そのLV(EV)数値をカメラに設定するんです。あまりシャッタースピードも絞りも気にしない。
設定した後で、「背景をぼかしたいから、絞りを開けよう」と思ったら、最大の絞り値にダイヤルを回す。すると、LV方式のカメラだから、シャッタースピードダイヤルもロックされているから連動して動くので、シャッタースピードはそこまで気にしなくていい。
あるいは、遊んでいて動き回る子供の写真をぶれないで撮りたいから、シャッタースピードをあえての1/250にしよう、と考えたら、シャッタースピードダイヤルを1/250に合わせる。絞りダイヤルはロックされていて連動して動くから、絞りをそこまで気にしないでいいのです。
わざとアンダー気味に、暗めに写真を撮りたいなら、露出計のLV(EV)数値が11でも、12とか13とかに、カメラの方のLV(EV)数値を設定すればいいのです。
反対に「ゆるふわ〜」にしたかった、LV(EV)数値が11でも、8とか9とかに設定すればいいのですな。
LV方式は露出補正がしづらい、と言う意見も見ましたが、むしろ逆だと思うけどな。
この記事では、LV(EV)数値って書いています。
厳密にはLVとEVは違うのですが、最初に書いた通り、四捨五入すれば同じです。光の量を表す数値で、LVは絶対値、EVは相対値(フィルム感度で変わる)のですが、ISO100のフィルムを使えば同じことになる。ですから、この記事ではあえて突っ込んだ説明はしません。その説明をするとわかりにくくなるからね。
本当にもー、なんで色々な言葉を使うかな!怒!
さて。
光の強さを数値化したものがLV(EV)数値 です。ただし、ある一つのLV(EV)数値でも シャッタースピードと絞りの組み合わせはいくつもできる。そして、その組み合わせの「群」というか「一連のパターン」は一種類です。
ISO100のフィルムで説明すると、晴天の昼間でEV15なら、「60-22、125-16、250-11、500-8」、と組み合わせの一群・一連は一義的に決まる。
朝とか晩なら、もちょっと暗い、光が弱いから、EV13とすると、組み合わせの一群・一連は、「60-11、125-8、250-5,6」です。
その上で、ここは絞り優先で、f2.0で行こかな、とか、歩行者に動きをつけたいから、シャッタースピードを遅めに1/30にしようかな、とか決めると、LV方式のカメラでは、絞りダイヤルとシャッタースピードダイヤルが連動しているから、さささっと合わせることができる。
カメラがLV方式であるのにもかかわらず、LV(EV)からアプローチしないで、 シャッタースピードからアプローチしたり、絞り数値からアプローチすると、使いにくいと感じると思います。
素直にLV(EV)数値からアプローチすれば、素直な操作だと思いますよ。残念でもなんでもないと思う。
そういうカメラなんだもの。
別に僕は、「LV方式がすごく使いやすくて、優れている」といいたいわけではないのです。
ただ、LV方式のカメラを使って、LVロックがうざい、使いにくい、ロックを工作して外してしまえ!、というのはちょっと違うのではないかなと思っているだけです。
...この記事を書いて、どっかで同じことを読んだな、って思って調べたらありました。
現代カメラ新書No.86 「ズイコー夜話 -オリンパスカメラ外史-」桜井栄一 昭和58年朝日ソノラマ pp.84-86。
「さて、ディッケルはこのLVの考え方を実用に供するためコンパーシャッターの大改造を行った」p.84
なるほど、このライトバリュー方式で、絞りとシャッタースピードを連携させたいがために、旧式の等倍の数値設定から、現在のシャッタースピード数値設定に変わっていったんだ!
「ライトバリューの導入を契機としたタイム(注:シャッタースピード)、絞り数値の倍数系列化や、その目盛りの等間隔化はその後のカメラの進歩に大いに貢献したが、ライトバリューシャッターそのものは過渡期の産物で寿命の短いものだった。特にダイヤルと絞りつまみとの結合には、実技上当初から疑問が持たれ、反対論者も多かった。私(注:桜井栄一氏)もその一人であった。だが、そんなことより、この時期特に取り上げなければならないのは、露出計連動の技術動向が、レンズシャッターの在り方に重大な転機をもたらしたことである」pp.85-86
やっぱり、LV方式のカメラは使いにくかったのかぁ????
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